データ分析コーナーの使い方⑧

ダート長距離路線の整備で短縮の今

〜ダート長距離と短縮の関係性が、徐々に変わろうとしている〜



*ページ数をオーバーして、『短縮×逆ショッカー(ガイドワークス)』に収録しきれなかった原稿。単行本P148のレースが詳しく解説されているので、そこに掲載されている出馬表と見比べながら読むと、より逆ショッカーの理解に役立つと思う。ダート長距離がJRAのレース体系の位置づけの中で少し変わってきたことに関する考察が含まれている。


 JRAでダートの1900mを超えるレースは少ない。以前はほとんど1800mで行われ、長くても東京2100mというパターンが多かったわけだが、最近は1900mや2000m、2400mなどの距離で行われることが多くなった。

 ただ、JRAダートは2100mを超えると頭数が揃わなかったり、メンバーが揃わなかったりして、極めて単調なレースが増える。そのため、それほどダートの1900m以上は、前走タフな距離を走ったことによる体力補強がメインとなるショッカーにとって、効果的な条件とはいえない面があるのだ。そこで私も、あまりダート長距離からの短縮は狙わないケースが多い(芝の2400m以上にも似たような問題はあるが、ダート長距離よりはマイナーな施行条件ではないので良いメンバーも揃いやすく、昨年の菊花賞のようなタフなレースにさえなれば、次走のショッカー成功率は格段に上がる)。

 ところが原稿を書いている昨日、ショッカー独占の超高配当レースが、そのダート長距離でもあった。

 ダート長距離問題について考えるのにちょうどよい機会なので、早速見てみよう。

 4月30日、日曜東京の最終、ダート2100mだ。

 このレース、新聞に目を落とした瞬間から、何とも怪しい香りがしてきた。

 穴レース特有の、なんともいえない匂いだ。しかも、ただ荒れるだけではない、M的な匂いが、そこには漂っていた。

 まず目にとまるのが、延長と短縮の多さだ。

 延長馬が8頭、短縮馬が7頭。同距離馬は実に1頭しかいない。

 それもそのはず、東京開催が始まってまだ2週。同距離の東京2100mからは間隔の開いた馬しか出てこられない状況だ。

 以前にフェブラリーSの話で書いたように(*単行本参照)、延長、短縮が入り乱れた方がレースの流れも乱れ、波乱になりやすい。しかもタフな競馬になることが多いので、ストレスのある馬が消えやすく、M的にも有り難い。波乱レースで輝きを増す、ショッカー連中にとっては尚更だ。

 短縮や延長が入り乱れているだけではない。広い東京の長距離戦で本来は単調になりやすい条件だが、16頭立ての多頭数で前走逃げや先行をしていた馬が多いので、ペースがタフになる確率がかなり高い。

 この状況なら、ショッカーが機能しにくいダート長距離でも、俄然面白くなる。

 加えて1番人気のメゾンリリーの存在だ。同馬は前走2400mで3角2番手から競馬をして、今回距離短縮。かつ、以前ダート1800mで勝ち鞍がある。すなわち短縮ショッカーである。

 が、どうだろう?

 今回は前走2着激走後の中2週だ。しかも前走は、芝からダートのショック療法を決めた後である。

 これでは疲れの可能性が高まる。短縮最大の弱点である疲労に足元をすくわれて凡走しても、なんらおかしくはない。

 それでもレース摩擦が弱ければ心身ストレスを我慢することも可能だが、さきほど見たように今回のメンバー構成なら、タフな混戦になる確率が高い。となると、ストレスと疲労に耐えられる確率はかなり下がる。

 新聞を見た瞬間、狙いは2頭に絞られていた。

 2番人気サラセニアか、7番人気ピアシングステアか、だ。

 タフな混戦になったときに気になる短縮馬は他にも何頭かいたが、2頭を脅かすほどではないと考えたのだ。

 短縮馬も多い中で、なぜこの2頭だったのか?

 短縮馬の取捨について、ちょうど良いトレーニングになると思うので、他の短縮馬も内枠から順に見てみよう。

 まず5番人気のクールエイジア。

 同馬の近走最高着順は3走前の2400mでの3着。2100mからの延長だった。また過去に3勝しているが、そのうちの2勝が延長、残り1勝が同距離だ。そうなると今回の短縮2100mが、マイナスにならないまでも、凄くプラスになるとは考えにくい。

 また13頭立ての前走こそ3角7番手だったが、それ以前の3戦は全て3角13番手以降だった。ということは、今回16頭立ての速い流れで自然に騎手が乗った場合、8番手以内を取って逆ショッカーを完成させる確率はかなり低いし、仮に騎手が強引に仕掛けて完成させたとしても、今まで後方だった馬が無理に仕掛けたその負担で、最後に伸び負ける可能性も高い。

 さらにはここ4戦中3戦で13番手以下で、少頭数でも7番手と後方続きなのは、逆ショッカー完成以前の問題としても多少気になる。この形はS質の活性化が弱いので、仮に追い込み競馬で流れが向いたとしても、タフなタイプの追い込み競馬になった場合、一押しを欠きやすいのだ。

 もちろん短縮なので、予想されるタフな流れの追い込み競馬になれば食い込む余地も残すが、他の短縮馬が良ければ、それには敵わないという判断で良いステップだ。

 次は15番人気ラテールプロミーズ。前走3角8番手なので、今回8番手以内なら逆ショッカーの完成だ。それまでの過去3戦全て8番手以内で、過去に連対したときは常に先行していた。逆ショッカーポイントの「㈰近走で差して凡走し、以前に先行して好走」を満たしている。

 また3走前に今回より短くて小回りの中山1800mで8番手を取っているので、逆ショッカーを完成させるのに無理をする必要はない。

 逆ショッカーの質としては良い馬だ。

 ただ前6戦は全て1秒以上千切られて負けている馬で、状態自体が悪い可能性も高い。そこまで手を回すかどうかは、判断の分かれるところになる。

 次は12番人気テイエムコンドル。前走2400mでいきなり逃げたので、今回は短縮ショッカーだ。

 しかも4走前に差して3着に好走しているので、今回差しに回る位置取りショックを掛ければ、なかなか悪くない短縮ショッカーである。ただ近3走全て1秒以上負けて、3着だった4走前も0.8秒差千切られていて、しかも追い込み競馬の流れに恵まれて後ろからちょろちょろ伸びてくただけの内容である。やはり勝ち切るかというと、状態に疑問が残る。

 最後は9番人気ナスカザン。前走3角13番手で競馬をして距離短縮だから、今回3角8番手以内なら逆ショッカーの完成だ。

 ただ、過去15戦中13戦で3角10番手以下だった徹底追い込み馬で、唯一9番手以内だった3,4走前は12頭立ての8番手、9頭立ての9番手である。つまり、近15戦全てかなり後方だった馬だ。それが厳しい流れが想定される多頭数の短縮になるここで、突然8番手以内に走って逆ショッカーを完成させる可能性はかなり低い。

 また、先程も書いたように、常に追い込んでいる馬は、仮に今回が追い込み競馬になったとしても、それがタフなタイプの追い込み競馬の場合は、差し脚が鈍りやすいのだ。

 プラス面としては、同馬はまだクラス3戦目と鮮度が高く、凡走続きで疲れもないことが挙げられる。それでいて3走前は勝っているように勢いもまだ残っている。ということで、他に良い短縮馬がいなければ来る可能性もあるという判断で良いだろう。

 

 以上から、残りの短縮馬は抑え候補の域を出なかった。

 ではサラセニアはどうか?

 前走3角4番手で、今回距離短縮。そして3走前には1600mで連対。

 なんとも分かりやすい短縮ショッカーである。

 しかも4走前は東京1600mで1着で、2,3走前は2400mで3着に好走するも連対には至らなかった。となれば、今回の短縮東京2100mはちょうど良いだろう。まさに得意条件への短縮だ。

 これほど良いショッカーは、なかなかお目にかかれない。これを本命にすれば軽く当たるはずだ。

 そこで人気を推測するためにいくつか新聞を買っているので、他の新聞も開いて一応人気を確認する。すると、どの新聞も印が思ったよりついている。

 どうやら人気らしい。少しテンションが下がった。

 そうなると、もう1頭の短縮馬にも目がいく。ピアシングステアだ。

 これはどうやら人気がないらしい。前走2400mで3角6番手。ということは今回8番手以内なら逆ショッカー完成だ。

 しかも、どうだ。2走前に今回の同条件の2100mで1着して、前走が2400mで3着。分かりやすい得意距離へのバウンド短縮である。サラセニア同様、滅多にお目にかかれない、教科書的な短縮だ。

 で、どっちを選ぶかである。

 サラセニアには2つの不安点があった。

 1つめは同クラスで2戦連続3着と好走している点。短縮最大の敵である疲れの可能性はある。ただ、3走前は格下500万で、しかも約5ヶ月ぶりの休み明け、加えて4歳馬。これなら長期疲労はほぼない。また前走は3着といっても1番人気で3着。力を出し切ったわけではない。格上げ戦の勢いで3着に好走した直後で、少し反動があったのだろう。その状態でまた3着に好走しているならかなり充実している、「S系の連チャン期」でもある。多少の疲れは我慢出来るはずだ。

 むしろ怖いのは硬さが出る点だ。こういうS系のパワータイプは、使い込むと心身に硬さが出やすい。

 その硬さはパドックを見るのが一番だが、馬体重を見てもだいたいは分かる。今回大きく増減があれば、心身に硬さが出たものと判断して良い。特にこの場合なら増えすぎたケースになる。そうでなければほぼ大丈夫だ。そこで「特に増えすぎ注意」と予想では書いた。

 もう1つの不安点は、不安と同時に、より大きな期待も孕んだタイプの不安だった。

 同馬の位置取りである。

 恐らくこのレースは厳しい流れの差し競馬になる。サラセニアは3戦続けて最初のコーナーで6番手以内を追走している馬だ。短縮ショッカーは、前走3角5番手以内で、次走流れ激化になったときに、後ろに回る位置取りショックを仕掛けたとき、より破壊力が増すのだった。

 逆に短縮で流れが激化したとき、前走と同じ好位を取ろうとすると前半の負担が厳しくなる上に、仮に前潰れの競馬になれば後ろから差される可能性は高まる。

 だがその不安は、不安であると同時に大きな魅力でもあった。

 というのも、本当にタフなタイプの厳しい流れの差し競馬になったときに一番有利なのは、前走前に行っていた馬が差す形だからである。

 仮に追い込み競馬になったとしても、それが馬にとって極めてタフな競馬になったときは、近走常に追い込んでいる馬の差し脚より、近走で前に行っていた馬の差し脚の方が上回るケースが多いのだ。それまで流れに入っていったという厳しい体験が、今回後ろに回ったときの差し脚に活きて、破壊力がより増すのである(位置取りショックで気分転換が出来るという点も見逃せない)。

「高地トレーニングを積んだランナーのように」である。

 これは、逆ショッカーが前走より前に行けば行くほど回収率が上がるという「位置取りショック」の構造と、先行と追い込みの違いはあれど、意味は同じである。そもそもこの概念が理念の元にあるからこそ、逆ショッカーは高い回収率を誇るのだ。

 あるいは大レースでは、それまで逃げていた逃げ馬より、逃げていなかった馬が逃げる方が残りやすいという現象も、同じ構造になる。それまで馬群に揉まれていた馬が逃げることで、突如視界が開け、気分良く走れるので激走するのだ。

 この、「タフなレースの追い込み競馬になればなるほど、近走でいつも追い込んでいた馬より、前に行ったことのある馬が追い込んだ方が有利になる」現象は、特にレベルの高い重賞では多い。その馬の極限を試されるレースで、この現象は起きやすいからだ。

 私は毎週、重賞のデータ分析をしているのだが、そこでよくこの形の分析は出てくる(*「競馬予想GP」にて連載)。つまり、追い込み競馬になったときは、前走追い込んでいない馬が追い込んだ方が成績が良いというデータが、実際に出現するレースが多くあるのだ。

 摩擦のない追い込み競馬だと、前走追い込んでいた馬の方が走るケースも多いが、摩擦が増えると結果は逆転する。

 そのあたりの違いを、レースの摩擦に即して具体例で解説しているので、毎週重賞データ分析を読んでいる読者であれば、「ああ、あのデータパターンか」と、思い出したはずだ。


 話をサラセニアに戻すと、このレースが極限を試されるタイプのタフな差し競馬になった場合、前走好位から、今回後ろに回る位置取りショックを仕掛ければ俄然有利になり、他の差し馬を抑えて、差しきって勝つ可能性は極めて高くなる。

 だが、前走同様の5番手くらいを追走したら、流れに飲まれて馬券圏外の可能性は高い。

 これが、3走前の1600mのときに10番手くらいで差していて、2400mの緩い流れになった近2走で前に行っていたのなら、今回は短縮でかなりの確率で後ろに回るだろうから、これ以上ない、究極のショッカーとして狙える。

 だが残念なことに3走前も1600mのハイペースを前に行っていて、しかも勝っていた。となると、その成功体験があるだけに、今回ペースアップしても、後ろに回る位置取りショックで短縮ショッカーの理想型を実現せず、短縮の激戦でもいつものように前目に行って流れに飲み込まれる可能性はそれなりに高い。

 騎手の判断次第で、半々だ。後ろに回ればほぼ勝つが、いつもの作戦を採れば3着も危うい。これで5番人気くらいなら迷わず本命だが、2番人気の人気馬で、騎手がそれまで成功している作戦と違う作戦を採るという判断に委ねなければならないのは、それをすれば勝つことは分かっていても、少し怖い。前走の3着を好走ではなく、一歩足りなかったと考えてくれていれば、今回は少し仕掛けを送らせる確率がグッと上がるが、前走の内容に不満というコメントはどこにもなかったのだ(もちろん前に行っても、私の読みと違って緩い流れの前残り競馬になれば、逆に有利になるというパターンもあるが)。

 では悩んでいるもう1頭、ピアシングステアはどうか?

 バウンド短縮で2走前に同条件で勝っていて、今回8番手以内を追走すれば逆ショッカー。これも実に美しいショッカーだ。

 ただ、この馬にも不安点が2つあった。

 1つめは今回の話とはあまり関係ない話だが、上がりの問題だった。

 同馬の2走前の1着が37.9秒。それ以外に2勝しているが、そのときも37.9秒以上掛かっていた。連対したときの最速上がりが2着したときの37.5秒だ。だんだん暖かくなってきて、砂の状態も少し速くなる頃合いだ。かなりのハイペース激戦にならないと、37.5秒だとぎりぎり2着か3着のラインになるだろう。ただ、37.5秒でも勝てるくらいのハイペース激戦の可能性もあるレースと考えていたし、またこの馬は逆ショッカーだ。つまり、前に行けば行くほど破壊力が増す。今回8番手以内を取って逆ショッカーを完成させれば、その位置なら究極のハイペースでなくても、37.5秒の上がりで勝てる可能性が出てくる。

 あるいは同馬はかつて軽い新潟のコースで大捲りをして3着に好走したことがあるので、早めに捲るという選択でも、上がりが掛かっても大丈夫になるので、勝てる可能性は高くなる。

 2つめの不安材料は、まさにサラセニアの裏返しとなる問題点だった。

 同馬は近3走で後ろよりから常に差していた。先程も書いたように今回究極のタフな差し競馬になった場合、このタイプは近走で前に行って刺激を受けた馬が差しを選択してきたら、その馬の差し脚には屈する可能性が高くなる。つまり、サラセニアのような馬が差しを選択した場合だ。

 ただ、サラセニアと違っていつも差している馬だから、今回も間違いなく差しを選択してくれるだろう。激しい差し競馬になるという読みの今回で、突如5番手くらいの競馬を騎手が選択してしまって差し馬に飲み込まれるという、理不尽な騎手の思いつきによるリスクは限りなく低い。そういう意味では安牌だ。

 これは、Mを知りすぎた人間しか分からない、究極の選択になる。

 タフな差し競馬になるレースで、前走前に行っていて差したら勝つ可能性が高い良いショックを持った馬と、常に差していて今回は良いショックが掛かっている差し馬。後者は間違いなく読み通りの激しい激戦になれば上位には差してくるが、前者の騎手が差しの位置取りショックを今回仕掛けたら、その馬には負ける可能性が極めて高い。だが前者は、いつもの前寄りのポジションを取れば、凡走する可能性が高い。

 この場合、前者が人気薄なら、騎手が差しに回る位置取りショックを掛けて勝利への激走フラグをたてるのを、一か八か狙う方が面白いが、この場合は2番人気と7番人気だ。2番人気の人気馬に、騎手が前走と違う位置取りをとるのを要求するのは酷だし、騎手の選択に頼るには人気で怖いオッズだ。

 となると、7番人気のピアシングステアでいくのが、期待値としては正しい選択になる。もちろん、サラセニアの騎手が今回控えるという情報をつかんでいれば、話は全く違う次元になるのだが(あるいは騎手がちょうどMの法則を読んでいればだが・・・)。

 そこで私はサラセニアは硬さが出るリスクから「増えすぎ注意」と書いて対抗にして、ピアシングステアは「ハイペースになって上がり掛かれば」と書いて、本命とした。

 そして迎えた当日。

 サラセニアは増減なし。1つめの疲労に関する不安点は払拭された。第一関門クリアだ。

 ピアシングステアの上がり問題はどうか?

 当日の馬場は、暖かくなってきたが、それほど懸念された高速化はなかった。ペースが上がるか、積極的に道中動いて逆ショッカーを大胆な形で完成させれば、ピアシングステアの上がり問題もクリアされる可能性が高い。こちらも、第一関門クリアとなった。

 あとは騎手の位置取りだけだ。

 ということで、2頭の馬連、単勝、ワイドを厚く、複勝はピアシングステアにガツンといった。3連複は2頭が今見たように第一関門をクリアしたので好走するのはほぼ確実になったため、この理想的なローテーションのショッカー2頭のどちらかが勝つしかなく、他の馬をいちいち考えるのもバカらしいので、あまり買わなかった。単勝はサラセニアで4.3倍、ピアシングステアで18.4倍。こういうときは2頭とも買うのが一番だ。ただサラセニアの複勝はよくない。さっき見たように差しに回る位置取りショックを掛ければ勝つ可能性が限りなく高くなるが、前走と同じ好位を追走すれば消える可能性も高い。それで2番人気では、複勝の意味は全くない。単勝で十分だ。

 ピアシングステアの場合は、差しを選択することはほぼ分かっているのだから、あとはサラセニアのような馬が良いショックを掛けてさえ来なければ勝てるし、掛けてきてもそれが2頭までなら3着には来る。さっき見たようにそういう馬が3頭も出てくるメンバーではなかったので、3着以内は今日の馬場なら9割方は大丈夫だ。それでいて7番人気、最低でも3.8倍つく複勝なら、喜んで買いで良い。期待値が高すぎるのだ。

 ただ、複勝は案外票数が少ないから、マイナーレースで人気薄を買うのはよくない。マイナーレースでは3連複を買った方が良い。このレースはG㈵週の東京最終なので票数も多いので、それを気にする必要もないのだったが。


 そしてレースだ。

 ピアシングステアはいつもと同じ中団の少し後ろ。逆ショッカーなので、これで良い。それ以上下げると、そもそも上がり勝負で間に合わなくなる。

 そしてここから、道中早めに仕掛けるとより上がりが掛かってもよくなるし、逆ショッカーも間違いなく完成するのでベストだ。しかも前に行けば行くほど期待値の上がる逆ショッカーだ。前半は追走に負担が掛からないようにその位置で良いが、早めに捲ると短縮の体力を活かせて理想になる。あとはいつ仕掛けるか、それだけだ。

 次にもう1頭、サラセニアを見る。

 後ろだ。

 出来上がりだった・・・。

 サラセニアは後ろに回る位置取りショックを掛けてきたのだ。これで確実に来る。位置取りショックを掛けてきたぶんだけ、ピアシングステアに先着する可能性も高くなったが、まぁ、両方の単勝を買っているし、悔しくはあるが、たいした問題でもない。

 そしてピアシングステアが動き始めた。

 いいぞ、逆ショッカー完成だ。もっと早く動いても逆ショッカー効果がより出て良いが、差し競馬になる予定なので、許容範囲の仕掛けだ。とんでもなく早く動いて、追い込み競馬で飲み込まれるよりは確実性が高い。この動き出して3角で逆ショッカー完成の瞬間、3着以内は間違いなく確定したのだから。

 今回の2頭の位置取りなら、恐らく短縮ショッカーと逆ショッカーの、この2頭で決まる。2頭だけの世界が、直線では繰り広げられるだろう。

 そのときだ・・・。2頭より一歩先に出て、前で粘る馬がいる。

 ラテールプロミーズ。ブービー15番人気の馬だ。

 うん?一歩先に出ている?

 この馬は最初見たように、今回、逆ショッカーリーチ馬だったはずだ。ということは、前に行っているということは逆ショッカー完成である。しかも、ピアシングステアより先に動いて、逆ショッカーをより強固なものにしているのだ。

 近走全て1秒以上負けて体調が悪い可能性があった馬である。ただ、既にここまで動けているところを見ると、体調もある程度戻っている可能性が高い。

 逆ショッカーの天敵、その一歩前に行く逆ショッカーである・・・。

 そして後ろから襲いかかるサラセニア。これが勝つのはすぐに分かった。今まで見てきたように、タフな激戦になれば、逆ショッカーより短縮ショッカーの方が強いし、今回は後ろに回る位置取りショックを大胆に掛けてきたのだから、差し競馬になれば、当然差される。

 道中のラップはまずまず速い。勝つのはこれで間違いない。問題は2着争いだ。

 先に抜け出した同じ逆ショッカーのラテールプロミーズをピアシングステアは抜けそうで抜けない。結果、ラテールプロミーズが2着、ピアシングステアはクビ差3着に終わった。この3頭がタイム差なしの激戦で3着以内を独占し、4着以下には0.9秒差千切る、まさに3頭だけの世界だった。

 ピアシングステアの上がりが37.4秒。計算より若干ペースが落ち着いて、同馬の過去に連対した上がりより微妙に速くなったぶん計算と違って伸びきれなかった面も大きいが、逆ショッカーはやはり前に行けば行くほど有利になるので、先に抜け出したラテールプロミーズを捉えきれなかったという面が大きい。

 サラセニアの単勝4.3倍、ピアシングステアの複勝4.5倍、そしてワイドでガッポリ稼いだので良かったが、馬連は同じ逆ショッカーのもう1頭に阻まれたのだった。タフなレースになったときの逆ショッカーの敵は、やはりどこまでいっても、逆ショッカーと短縮ショッカーである。

 結果、1着短縮ショッカー、2着逆ショッカー、3着逆ショッカーの、ショッカー独占競馬で後続を0.9秒千切り、3連複602倍、3連単2604倍の大万馬券という結末になったのだ。

 短縮、延長の入り乱れる多頭数混戦におけるショッカーの強さ、そしてタフな混戦になったときの短縮ショッカーの際だった強さ、そういったものを改めて我々に思い知らされるのに十分なレースが、ここにまた出現したのである。

 ところでこのレース、7頭いた短縮馬は、2番人気1着、15番人気2着、7番人気3着、6番人気4着、1番人気5着、12番人気7着、9番人気8着と、なんと8着以内のうちの7頭を、そのまま独占したのである。しかも、7頭中6頭が人気を着順が上回っての独占だ。

 たいして延長馬は、4番人気6着、16番人気9着、8番人気11着、11番人気12着、14番人気13着、3番人気14着、10番人気15着、5番人気16着と、8頭中着順が人気を上回った馬は2頭しかなく、その最高は6着で、後ろの11着から16着を独占という結果に終わった。

 この結末は、タフな激戦になった場合には短縮馬が有利になるということと同時に、明らかに馬は前走の記憶を元に走っているということの証明にも他ならない。レースの質によって、これだけ延長馬と短縮馬の色分けが、はっきりとするのだ。

 裏返すと、延長馬と短縮馬の結果を見れば、そのレースの「レース質」がよく分かるということでもある。

 なお、それまで追い込み一辺倒で逆ショッカー完成が難しいとされたクールエイジアとナスカザンは、やはり今回も騎手が追い込みを選択したので逆ショッカーを完成出来ず4着以下に敗れた(といっても、クールエイジアはショッカー3頭に続く4着で短縮の強さを見せたわけだが)。つまり、2頭しかいなかった逆ショッカーが、人気薄にも関わらず2頭とも3着以内に入ったということになる。


 また、このレースにはもう一つポイントがあった。

「ダート長距離問題」だ。

 最初に書いたように、ダートは1900mを超えると単調なレースが増えて、短縮の効果はそれほど期待出来なくなる。

 だが、今回のレースはそのダート長距離からの短縮馬が上位を独占したのだ。

 以前はこのように東京ダート2100mで短縮馬が多く出てきて、また延長馬も多くいて入り乱れるというレースは少なかった。ほとんどが延長馬で構成されているのが一般的だったわけだが、ダート1900m以上の路線のレースが整備されて増えてきたことで、入り乱れた乱戦、つまり短縮馬向きの混戦も、ダート長距離で徐々に増えて来つつある、これはその予兆かもしれない。長距離のレースが整備され、増えることで、この場合なら以前はレベルが低くてショックとしての質が悪かった前走の2400mという条件も、タフで摩擦のあるレベルの高いレースになって次走へのショック成功率が上がり、また今走もショック馬が走りやすいタフな摩擦のあるレースになるケースが増えるという、ショッカーの好循環が発生する土壌が熟成されつつあるという可能性だ。 

 もちろん、ダート1900m以上からの短縮馬は、甘いレースを使ってきた確率が依然高くあるので、慎重を期す必要はあるだろう。それでも今回のような乱戦になれば、短縮馬、とりわけショッカー達が独占して高配当をもたらすシーンは多くなっていくはずだ。

  今後も、ダート長距離路線の動向を注意深く見守っていく必要がある。

 そういうふうに強く感じさせるレースになった。



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